第三章:「ののじ」ブランドに込めた想いと、“丁寧な手道具”の進化

――“ののじ”ブランド誕生の経緯、そしてお名前に託した思いをお聞かせいただけますか。
「ののじ」という名前は、日本人が人前で褒められたり、嬉しさや照れくささを感じた時に、つい畳の上で“の”の字を指で描く――
そんな恥じらいや奥ゆかしさを、ものづくりの中でも大切にしたいと思ったことが由来です。
私自身、どんなに新しいアイデアがひらめいても、「これならきっと便利だろう」ではなく、「使う人にとって本当にやさしいか」「長く寄り添えるか」を繰り返し考えます。
商品を世に出しても、お客さまからの声をたくさん伺い、さらに改良を重ねていく――
ひとつの商品に何度も試行錯誤を重ねる中で、「もっと薄く削れるピーラー」「お子さんがこぼさず食べられるスプーン」「高齢者でも握りやすい包丁」など、身近な困りごとを一つずつ形にしてきました。

――商品開発の裏側には、どんなストーリーがあったのでしょうか。
たとえばピーラーは、長く「皮むき」専門道具とされてきましたが、皆さんのお悩みやご要望を伺ううちに「千切り」「細切り」「リボン状」など、さまざまな切り方ができるものもつくれないかと考えました。
そして試作を繰り返し、やっと手応えを得て、世に出すことができました。
ヒット商品となり、多くの家庭や保育施設で使っていただけることになりましたが、これは本当に周りの方の支えと、お客さまの細やかなフィードバックのおかげです。


