社長のインタビューシーン

――学生時代・社会人になられてから、ものづくりへの情熱はどのように育まれたのでしょう?

私は電気計測器の設計部門に就職し、電話回線、放射線測定器などさまざまな分野に進むことができました。
また、ガラス工芸や彫金を学び、ガラス職人の世界で「ガラスの柔らかさ」「割れる儚さ」と向き合い、金属や精密機械の現場で工程や仕組みの妙に魅了されました。
社会人生活も決して順調というわけではありませんでした。ミスも失敗も数知れず、修理や設計で悩んだ夜も多くありましたが、不思議と上司や先輩たちが「若いうちは失敗して当然」と受け入れてくださいました。
「手を動かすことを恐れず、やってみなさい」「困ったら知恵と工夫で乗り切ればいい」
そんな言葉に支えられ、自分のなかで「見よう見まねでも、一歩踏み出してみよう」という勇気が育ったように思います。

社長のインタビューシーン

――起業当初はITの分野で活躍されていたのですね。手道具の世界に転じられたきっかけは?

はい、若い頃は「IT技術で世の中を便利に変えられる」と信じて夢中で仕事をしました。
ただ、技術の進歩が早すぎて、自分の仕事や工夫がいつのまにか置き換えられてしまうこともあり、「果たして自分は、誰かのために働けているのだろうか」と悩みました。
そんなある日、たまたま銀細工の端材で自分なりに作った耳かきが、思いがけず好評を得たのです。
それをSNSで試しに紹介してみると、「こんな耳かきは初めて」「使ったみたい」「家族にも使わせたい」とたくさんのお声をいただくようになりました。
「ささいな工夫が、誰かの暮らしを支えることがある」――
そう気づけたことで、“日々の暮らしにそっと寄り添う道具”の開発が自分の使命だ、と強く感じるようになったのです。

三章「 「ののじ」ブランドに込めた想いと、“丁寧な手道具”の進化 」

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